第6回 全国地域おこし 名人・達人サミット in 桶川・北本

遊休農地を活かし、農の担い手つくる 「滝瀬塾」発会式

2024年11月6日

 桶川・北本サミットの発起人の一人、元埼玉県議会議長の滝瀬副次さんは、現在84歳。北本に有する広大な農地を夫婦で管理し、大型機械を活用しながら主に米や麦を作り続けています。
 かつては地域にたくさんいた農家は時の流れと共に減少し、遊休農地が増え続けています。日本の食糧自給率は下がり続け、このままでは確実に食糧危機を迎えてしまう。その状況を憂いた滝瀬さんは、「何とかしなければ」という思いを胸に、桶川・北本サミットの実行委員会に参加する中で、実行委員の仲間たちと共に、新たな農業の担い手を育成したり、市民が農業に関わる仕組みを作るための「滝瀬塾」を計画。すぐに準備会が立ち上がりました。
 10月29日には滝瀬さんの自宅の別棟で「滝瀬塾」の発会式が行われ、30人ほどが参加しました。

 発会式の冒頭で、滝瀬さんが思いをお話しされました。

滝瀬さんのお話 農業を次の世代へつなぎたい

 私はもう70年も農場をやっていますが、農業のやり方や農政も変わってしまい、これからの農業がどうなってしまうんだろう、このままいったら日本の農業は終わってしまうんじゃないかと考えました。こんな心配をする中で、このサミットに参加しました。
 いろいろなご意見を聞くと、みなさんが一番心配されているのが遊休農地でした。この北本は、農地が広くて災害がない、本当にいい農地ばっかりなんですが、これがどんどん荒廃して、遊休農地になってしまった。私の親父などが作った組合は、かつて260人も組合員がいたのが今は10人ぐらいです。
 親父は当時、村会議員でありましたけれども、荒川から水を揚げて、土地改良事業をやりました。この改良事業と同時に、米のご飯が食べられるようになって、学校に持っていく弁当にも遠慮せずに米のご飯が入れられ、食べられるようになりました。これをずっと受け継いできましたが、どんどん北本の農業が衰退している。一番の原因は「農業後継者」がいないこと。高齢者がみんな農業をやめてしまう。機械が壊れるか自分が壊れるかというような状況です。
 今、うち以外は桶川に行くまで米を作っている人はおりません。米を作っていた田んぼがみんな荒れてしまっている。私はなんとしても遊休農地を次の世代の方々に守っていただき、どんな品種を作るにしても、 みんなで耕作してもらえればいいなという考えの一念でこの会に参画をさせていただきました。

 私が農業をやり出した頃、うちは酪農家であって、乳牛を飼って、親子で乳絞りをしていました。そこから出た堆肥で、ほとんど化学肥料を使わなくても、米や麦、サツマイモができました。養蚕もやっており、立派な桑畑もありました。
 その後農業の機械化が進み、あちこちに工場ができて、隣近所の我々の年代の方々もみんな、農場をやるよりもお勤めをするようになってしまいました。だんだん「三ちゃん農場」、じいちゃん・ばあちゃん・母ちゃんが(労力を)機械化で補いながら農場をやるようになりました。
 年数を重ねると、お勤めをしている方の給料もよくなって、農業所得より月給をもらった方がいいような時代になってきて、今日のような状況になってしまいました。

 農業が衰退しても、家計はなんとかほかの職業でまかなえますが、遊休農地が荒廃してしまうということは日本が大いに衰退してしまう、力が弱くなってしまうということ。なんとか遊休農地を次世代の方々に、何の作物を作ってでもいいから活用していただきたい。こういう気持ちが強くあり、農業の塾を作ったらどうだと島野さん(ワーカーズコープ埼玉事業本部相談役)たちから説得され、そのつもりはあまりなかったんですけれども、だんだんそこへはまってきて、今回の発会式になったわけです。
 この年齢で先頭に立って、何から何までやるということはできませんけれども、私がこれまで経験したこと、また今後の農業を思うことを皆さん方にお話し
しながらやっていければと思っております。いくらかでも日本農業をよい方向へ変えるような組織ができるようにがんばりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 サミット実行委員会事務局共同代表の山本幸司さんから滝瀬塾の概要に関する提案がありました。

<塾生対象者>
★専業農家を目指してみたい人
★兼業・副業として農業をやってみたい人
★退職後の時間を活用して農業をやってみたい人
★家族と自分のために安心して食べられる有機農業をやってみたい人
★農業と福祉の連携した取り組みを進めてみたい人

<滝瀬塾の運営>
滝瀬さんを塾長とし、その下に「滝瀬塾運営委員会」を設置し、塾の講義・実習等々の企画、塾生の募集、その他運営全体にあたる
*運営委員会には、代表、事務局長、会計など必要な役職を設ける
※運営委員の選任(塾の趣旨に賛同する者、塾が行う事業に専門的知識・技能を有する者)
*「塾」立ち上げ及び運営資金の確保に対する考え方
※塾の運営資金は塾生による会費を基本とする、併せて「滝瀬塾応援団」を作り広く賛同金を募る

<塾が行う主な事業内容>
*日本の農業と食料等の現実を学ぶ講座の実施
*農業に関する基礎的知識と技能を提供する(遊休農地を活用し実技実習を行う)
*塾生の希望に応じて栽培する作物を確定し、栽培計画を立て実践する

<塾開講までの主な課題とスケジュール>
*運営委員会の確立:年内に運営委員を選定し、第1回運営委員会を開催する
*塾生募集開始・期間:第1回運営委員会で確定する
*募集方法:市広報及び協力いただける機関・事務所等にチラシ配布 

 最後に、参加者一人ひとりが発言されました。
 自身の農との関わりについて話されたり、「農に関わるにあたって住まいも考えていくことが大事ではないか」「塾の講座を受講する人たちだけでなく、会の趣旨に賛同し、月1回程度の援農や農業体験などもできる会員制度の確立も」などの意見もいただきました。

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